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京都鴨川藝術大学

Kyoto Kamo River Imaginary University of the Arts

『エッグ』

『エッグ』 深津絵里 妻夫木聡 ほか

4月4日夜、シアターBRAVA。Noda Map 第19回公演『エッグ』を観てきた。

野田秀樹の舞台は初めて。演劇という表現方法において高い効果をあげる演出がなされていて、一言でいうと極めて演劇的だった。始めから終わりに向かう線形の劇ではなく、一枚二枚と皮を剥いで核心に迫る円形を思わせる劇だ。物語のつなぎ目が象徴的・抽象的に処理されることで曖昧になっていた部分が、終盤に掛けて一気に繋がる巧みな脚本は、凡人には到底真似のできる芸当ではない。

トーリーは、「エッグ」と呼ばれる謎のスポーツを巡って展開する。寺山修司が書き残した(という設定の)「エッグ」に関するシナリオを、現代のとある作家が脳内で再現していく。初めは表面的にしか読めていなかったものを、深く読み込んでいくことで、「エッグ」があるもののメタファーになっていることが判明する、という内容。

最初に設定されたものが、作家の読み直しによって、訂正のうえ再提示されるので、登場人物はそのまま、周囲の環境がどんどん変化していく。それによって多少の矛盾を生じる。例えば、我々が1964年だと思って観ていた世界が、実は1940年だった、となると寺山修司が書いたシナリオというのは成立しない。そこら辺を上手くぼやかしているのは、まさに演劇的手法の巧みさによる。(すいません、言葉で上手く説明できないものを「演劇的」で済ませています。)

で、まぁ結論を言ってしまえば、これは731部隊の話。事前情報を入れずに見に行ったのだが、かなり序盤の段階で戦争の話であることが匂いで分かる。それから間もなく、これが日本軍がやったなんらかの残虐行為なんだろうなぁ、となると、人体実験かなぁ、と思っていたらその通り。「エッグ」と「人体実験」がどう関係するのか分からなかったが、それが繋がった瞬間にはゾッと鳥肌が立った。エッグのチームリーダーが絶対的権威を持ってる(=天皇)みたいな戦前日本を思わせるメタファーもちりばめられ、笑いの多かった前半が一転、後半は悲劇。愉快に笑ってばかりで過去を忘却するな、という辛辣なメッセージで終わる。演劇の組み立ての妙には感心したが、好きな話ではなかった。

良い役者ばかり取り揃えているが、中でも深津絵里が良い。圧倒的に好き。長らく私の中では多くの女優さんの一人に過ぎなくて『ステキな金縛り』を観て初めて良いと思った程度の深津絵里。この度、好きになりました。声が美しい。歌が上手い。ただでさえ好きな椎名林檎の曲と非常にマッチしている。42歳? 私は絶対に信じないぞ。

演劇は良い。この臨場感だけは、映画には絶対勝ち目がない。

NODA・MAP「エッグ」BOX(CD付)

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エッグ/MIWA: 21世紀から20世紀を覗く戯曲集

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