京都鴨川藝術大学

Kyoto Kamo River Imaginary University of the Arts

『隠蔽捜査』

『隠蔽捜査』 今野敏

数年に一度、酔った父親から本を薦められることがある。私は父とは全く趣味が違う。読みたくない本を読むほど苦痛なこともないわけで、数年に一度とはいえ、迷惑している。で、久々に小説を読んだ。話の流れを見失わない程度の速読である。読んだという事実がまず大事だ。それから一応の感想を用意する。

東大卒でプロ意識の高い警察官僚の物語。主人公は、出世・ポジションに執着し、野心も強いが、ルール・規則・原則に厳格で、曲がったことは好まない人物。逆にいえば融通が利かず、頑固でクソ真面目で、要は正義感が強いのだが、学歴にこだわり、脳内で自分と相手を常に比較し勝ち負けを判断するような、子供っぽさの抜けきらない変わり者である。普段はマスコミ対策をやっている彼のもとに事件の一報が入る。被害者は、かつて少女を強姦殺人した加害者である。当時は未成年だったために、罰を受けなかったのだ。これだけでも大スクープであるが、その後、今回の事件の犯人が現職の警察官であることが判明する。事件をもみ消そうとする警察の中で、原則を貫く主人公がいかに振る舞うか、というのが本筋。主人公には、ヘロインに手を出した浪人中の息子がいて、自らの不祥事として、こいつの処遇にも悩むことになる。

主人公がうざい。まず東大東大うるさい。次に正論ばかり吐くので鬱陶しい。それから思ったことをストレートにいうから腹が立つ。デリカシーがない。相手の気持ちを慮らない。正しいことを言っているんだから、間違ってないだろう、ってそりゃそうなんだけど、そうじゃない、ってことを理解しようとしないのだ。

あとは著者による警察のウンチクと、主人公たちの語る組織や法律に対する思想信条なんだけど、どこかで聞いたような議論をなぞっているだけで、どうにも鼻につくんだよなぁ。

って、文句ばかり書いているが、主人公のキャラが立っているから、読めといわれて読んだ割に退屈はしなかった。文章はそこそこだけれど、読みやすかった。そういえば、これ「土曜ワイド劇場」で観たわ。

隠蔽捜査 (新潮文庫)

隠蔽捜査 (新潮文庫)