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京都鴨川藝術大学

Kyoto Kamo River Imaginary University of the Arts

『読む心・書く心』

日本語・文章・論理・レトリック

『読む心・書く心』 秋田喜代美

文章理解の心理学。当たり前のことを見える形にしてくれている、という点でありがたい一冊。ただし、既にこの分野の本を読んだことのある人間には既知の情報も多い。

第一章は、読むことについて。例題や実験データを用いて丁寧に解説してくれているが、結論を端的にまとめている部分があるので、引用する。

読むことは、語や文法の知識、書かれている内容の知識、文章構造の知識など読み手が持っている知識と、接続詞や図など文中に埋め込まれた手がかりを利用しながら、書かれた内容に知識を織り込んでつなぎ、1つの意味のまとまりを頭の中につくり出していくことだとお話ししてきました。つまり、文字さえ追って見ていれば自然に分かってくる……、といったものではなく、心の中で意識的につなぐ活動をしなければいけないわけです。(pp.51-2)

つまり、本を読んで勉強するのだけれども、本を読むための勉強というのがまた必要なわけだ。バカは本を読むこともできない……。

第二章は、読んだ内容を理解しているか確認するということ。つまり、批判的(クリティカル)に読むことと、そのための指針について。

第三章は、書くことについて。私が最も読みたかった内容で、実際、非常に勉強になった。少し触れておこう。

文章を書くという作業は、「計画」「翻訳」「推敲」の3つからなる。分かりやすく言うと、「構想を練って」「実際に書いて」「それを見直す」という3つ。私がもっともためになったのはここで、この3つは段階的に行われるのではなく、行ったり来たりを繰り返すものなのだ、というのである。皆さん知ってました? いや、私だって結果的には行きつ戻りつを繰り返して文章を書いていたのだけれど、類書には、まるで完璧なアウトラインが出来てからしか書き始めてはならないような調子で説明されているでしょう? もちろん、まずは「計画」を行うし、それを洗練させるのが手っ取り早い。でも計画は計画だから、書いている最中で柔軟に変更して良いし、書きながら頭の中だけで計画変更するのではなく、その変更をきちんと「計画」の段階まで戻ってやり直して良い、というわけだ。そして、実際そうやって文章をみんなが書いている、ということに、とても勇気づけられた。バカな私だけがウダウダと悩んでチマチマとしか書けないでいて、賢い人たちはみんなスラスラ文章を書いていると思っていたから。

もう一つは、書き始めで迷うなら、書きたいことを最初に書いてしまえ、ということ。これはシナリオで言えば、クライマックスを設定して、あとは逆算でオープニングを作る、というのと一緒だ。書き始めで悩むと何も書けなくなる、とか心理学の賢い先生が私たち凡人の辛いポイントを的確にツボ押ししてくれているのが気持ちよかった。

読む心・書く心―文章の心理学入門 (心理学ジュニアライブラリ)

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