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京都鴨川藝術大学

Kyoto Kamo River Imaginary University of the Arts

『夢見る幽霊』

『夢見る幽霊』  純丘曜彰

別居中のガメツい嫁に殺されるも、どうやって殺されたのか分からず幽霊になってしまった大学教授が、街で出会った幽霊たちと共に謎を解き明かす、というコメディ。物語はミステリーを中心に展開するが、主題は幽霊が幽霊になってしまった理由。幽霊たちは皆、生前にやるべきこと、やりたかったことを残してきた連中で、それに決着を付けるまで成仏できない。主人公が幽霊になってしまったのは何故? ――さぁ、読者のあなたは、やりたかったことを、やるべきことを、きちんとやりましたか? というわけ。とても素敵な話だ。

重要なのは、それが本当にやりたいことなのか、それが本当の夢なのか、ということ。主人公は自分が幽霊になった理由を探るうちに、それがトリック解明のためではないことに気付く。本当は、自らの言葉で人を感動させる小説家になりたかった。その思いを心のどこかでくすぶらせながら、蓋をしてしまった。神様はそれを許してくれなかったのだ。私のように漠然とした夢の持ち主は、死んでも幽霊にはならないのかも知れない。いや、夢を漠然とさせているものは、それこそ自分自身で、それをこそ乗り越えろと言うことか。あはは、何を言ってるんだろう、私、恥ずかしい。

著者の純丘先生は大阪芸大の教授。私はネットに投稿された文章と出版された本を読むばかりで、実物を見たこともないけれど、頭がいい人っていうのはいるんだな、と痛感する。自分の言葉に無力感を覚えて、語ることを止めてしまった主人公の教授とは異なり、純丘先生はガンガン言葉で責めてくる。毎度凹まされ、時に励まされ。

アマゾンにとっても素敵なレビューがあったから買ってしまった(なんだあの文章、ちょっと上手すぎないか)。しかし、Kindleってクレジットカードでしか買えないのね。あんまりカードで買い物したくないから、わざわざコンビニまでギフト券を買いに走った。GW最終日の憂鬱を何とか乗り切れたのは、この本のおかげだ。

夢見る幽霊: オバカオバケたちのドタバタ本格密室ミステリ

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