京都鴨川藝術大学

Kyoto Kamo River Imaginary University of the Arts

『大人の見る繪本 生れてはみたけれど』

『大人の見る繪本 生れてはみたけれど』 斎藤達雄 ほか

仲良し兄弟がとある街に引っ越してくる。悪ガキたちにいじめられて学校をサボるようになると、厳しいお父さんに怒られてしまう。そのうち悪ガキたちと仲良くなる。ある日、誰のお父さんが一番エラいか、という話題になる。自分たちのお父さんが一番エラい、と主張する兄弟。しかし、父の上司の息子である友人宅に遊びに行ったところ、そこで観たフィルムには、道化を演じて上司のご機嫌を窺うお父さんの情けない姿が。凹んだ兄弟は父に反抗する。

いい話だよな。家族を養うために下げたくない頭を下げ、戯けたくもないのに戯けてみせる。それがサラリーマンだ。それが社会で生きていくということだ。辛いけれど、家族を思えばこそだ。しかし、それが一番大事な子どもには伝わらない。でもお父さんは怒らない。ごめんね、と思う。辛い思いをさせたね、お父さんかっこわるいよね、と思う。それは本当はもの凄く格好いいんだけど、それが分かるのはもっと大きくなってからなんだな。そして、できれば子どもにはエラくなって欲しいな、と父は思う。それでまた、子どものために働くのだ。

子どもの方も、何だかんだ言いながら、父の上司を見つけて、父に「あいさつした方が良いよ」と声を掛ける。そうやって社会というものを何となく感じ取って、知らないうちに社会性を身につけていく、言い換えれば社会に取り込まれていってしまう。生まれてはみたけれど、小市民だったわけだ。

小津安二郎はトーキーよりサイレント映画の方が絶対良い。声無しでこれだけの感情を表現できるのに、どうしてトーキーになるとあんなことになってしまうのか。

映画史を学ぶ クリティカル・ワーズ【新装増補版】

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