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京都鴨川藝術大学

Kyoto Kamo River Imaginary University of the Arts

「ない」という日本語

「突拍子もない」という表現がある。これ、どういう意味?

「突拍子」というのは、調子外れ、という意味でしょう。ならば「突拍子もない」は、調子外れではない、という意味になるんじゃないのか。もちろん、そうではない。「突拍子もない」で、調子外れ、という意味になる。ここで「突拍子もない」の「ない」は強意であって否定の意味を含まない、と説明される。否定の意味がない「ない」なんてあるの?

一時期、「申し訳ない」という言葉が問題になった。ビジネスマナー講座とかで訳知り顔の講師が「申し訳ございません」は間違いだ、と言い出したのだ。「申し訳ない」で一語だから、「ない」だけを取り出して丁寧語の「ございません」に変えるのは間違っていると。たとえば「はしたない」を「はしたございません」と言わないのと同様である、というわけだ。

これ、どう? 「申し訳」というのは「言い訳」の謙譲語、「申し訳ない」というのは「言い訳がない」つまり「言い訳のしようもない」ということで、「ない」は否定の「ない」でしょう。だから、「申し訳ございません」は、あっても良い言葉なんじゃないのか。

さて、ここでググってみたところ、知恵袋で以下のように解説している人を見つけた。

「~ない」という形の連語系の形容詞には、次のようなタイプがあります。

①形容詞「ない」がついたもの。例 心ない・申し訳ない・何気ない・さりげない
②助動詞「ない」がついたもの。例 つまらない・くだらない
③強調の接尾語「ない」がついたもの。例 あどけない・せわしない・切ない・はしたない

ご質問の「突拍子もない」の「ない」は、③の接尾語であると考えます。①・②の「ない」は本義の打ち消しの意味が残っていますが、③の場合は打ち消しの意味を全く持ちません。

余談ですが、①と②の見分け方を言えば、「ない」を「ぬ」に置き換えられれば②、それ以外は①です。例「つまらない→つまらぬ○」「心ない→心ぬ×」

「突拍子もない事を言う」と表現はおかしくない... - 日本語 | Yahoo!知恵袋

なるほど、と思うのだが、やはり釈然としないのは「突拍子もない」というフレーズの「も」によるのだろう。そもそも「ない」という言葉自体に「深さ」「高み」の「さ」や「み」同様の接尾辞として馴染みがないうえに、この「も」が付くことでどうしても名詞「突拍子」が浮き上がって見えてしまう。

本当に言葉というのは難しい。