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京都鴨川藝術大学

Kyoto Kamo River Imaginary University of the Arts

『別役実のコント教室』

別役実のコント教室』 別役実

不条理演劇でおなじみ(観たことないけど)別役実のワークショップ本。笑いの分類など多少のレクチャーがあった後に、受講生に実作させてそれを添削していく。生徒たちが書いてくるのは、不条理なコント。不条理っていうのは、ここでは、現実なのに現実離れした、ちょっと異質な世界を描く、ということでいいと思う。本書では「死体」あるいは「爆弾」を題材に使っている。たとえば、目の前に死体があるのに平然と日常が展開するような、現実なのに現実じゃない世界。そこになんともいえないおかしさを覚えさせていくのが笑いとしての不条理だ。本来的な意味ではなくて、日本のお笑いにおける「シュール」という言葉が感覚的には近いのかもしれない。

感覚的、といったが、この本もとても感覚的だ。習作に対する指導は極めて的確で、別役の感覚は非常にバランスがいい。納得できねえ、それは面白くねえ、と感じる部分は一つも無い。しかし、そう感じるのも、やはり私の感覚に過ぎないだろう。別役自身、その感覚を精緻に理論化することができておらず、「これはもう、感覚的に分かってください」としかいえていない。個別の作品に対して各論しか語れず、全体を貫く総論がこの本にはないのだ。

もっというと、不条理演劇ってそもそも面白いのだろうか。別役の指導が的確で、確かにそうした方が面白いとは思うけど、私はこのジャンルが好きじゃないから、クスリとも笑えないんだ。『世にも奇妙な物語』みたいな漠然とした不安がずっと漂う世界とは、私はあまり長く向き合っていられなかった。というわけで、この本は表題通り「不条理な笑い」を目指す人のみが読めばいいと思う。

それより気になるのは白水社だ。この本をずいぶん前に見つけたとき、『井上ひさしのコント教室』も発売予定だ、と書かれていた。いま白水社のウェブサイトを覗くと、こんなページが用意されている。まったく話題になっていないようだが、果たしてどうなる。

別役実のコント教室―不条理な笑いへのレッスン

別役実のコント教室―不条理な笑いへのレッスン