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京都鴨川藝術大学

Kyoto Kamo River Imaginary University of the Arts

『ザ・ストーリー』 INTRODUCTION

『ザ・ストーリー』 INTRODUCTION ロバート・マッキー

アメリカのシナリオセミナー講師、ロバート・マッキーによる脚本論。脚本家(志望)のバイブルとの呼び声高い本書だが、その評判に違わぬ名著であった。とはいえ、同じ話を何度も繰り返す、一つの論に対して例を挙げすぎる、というアメリカ産の本でありがちな読みにくさも備えているので、目次に合わせて内容をざっくりまとめてみた。

目次:

INTRODUCTION 型破り脚本術
Chapter 1 ストーリーは「生きる」こと
Chapter 2 構成のスペクトラム
Chapter 3 物語世界を創造する
Chapter 4 ジャンルと決まりごと
Chapter 5 構成とキャラクター
Chapter 6 思考と感情のデザイン
Chapter 7 ストーリーの本質
Chapter 8 インサイティング・インシデント
Chapter 9 困難の連鎖
Chapter10 シーンをデザインする
Chapter11 シーンの分析
Chapter12 コンポジション
Chapter13 危機、クライマックス、解決
Chapter14 敵対者の原則
Chapter15 状況説明
Chapter16 問題と解決策
Chapter17 登場人物
Chapter18 脚本の実際
Chapter19 プロの流儀

INTRODUCTION

さて、この本、日本での出版に至るまで相当長い道のりをたどったようだ。原著は改訂されぬまま、出版されてもう20年が経つとか経たないとか。昨年末にダイレクト出版というビジネス書の会社がいきなり本書を出版したというので、すぐに買って一読。メモを取りながら再読し終わるのに、半年近くかかってしまった。

実は原著を取り寄せて何度か挑戦したことがあるのだが、未知の単語が多すぎて私の手には負えなかった。翻訳を読み終わった今、実はある程度読めていたことが分かって、自分でも驚いている。しかし、この本を原文で読んでいたら、一体何年掛かったことか。

今回はイントロだが、内容を見ていこう。導入部ということで、あまり具体的な内容には触れられていないが、全体を貫く核心的な部分でもあるから、注意しておきたい。

要は、物語は偉大だ、という話。人は未知の世界の中で自分との出会いを果たす。ステレオタイプを描くのではなく、アーキタイプ(原型)によって、それが可能となる。つまり、人は物語を見たときに、これは自分のことだ、自分の話だ、と思うわけである。それがあるから、人はストーリーを求める。

脚本家は、そんな「ストーリー」を求める人たちの要求を満たすアーティストだ。伝えたいとか表現したい、という気持ちではなく、観客の琴線に触れる作品を作りたい、という動機から創作を始めよう。「何を語るか」と「どう語るか」は表裏一体の問題だ。脚本は小説とは違い、最小の言葉で最大限のことを表現していく。だから、不要な部分をとことん排除していく。捨てたアイデアの量で脚本の質は決まる。

本書はビジネス書の出版社から翻訳が出されている。この「ストーリー」という観点をビジネスに生かせ、というわけだ。その他、小説家やコピーライターにも、「ストーリー」は使える! と宣伝しまくり。

しかし、この本は脚本家(志望)のためだけに書かれている。売文業の底辺である(と自分たちでさえもそう思い込んでいる)脚本家を「アーティスト」と呼んでいる本がこの本以外のどこにあるというのか。この本は脚本家に対する敬意に満ちた、誇り高い本なのだ。この本がバイブルと呼ばれるのは、まさにこの点にあるのだろう。

では、次回から本編。「Chapter 1 ストーリーは「生きる」こと

ザ・ストーリー

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