京都鴨川藝術大学

Kyoto Kamo River Imaginary University of the Arts

『ザ・ストーリー』 Chapter7

『ザ・ストーリー』 Chapter7 ロバート・マッキー

目次:

INTRODUCTION 型破り脚本術
Chapter 1 ストーリーは「生きる」こと
Chapter 2 構成のスペクトラム
Chapter 3 物語世界を創造する
Chapter 4 ジャンルと決まりごと
Chapter 5 構成とキャラクター
Chapter 6 思考と感情のデザイン
Chapter 7 ストーリーの本質
Chapter 8 インサイティング・インシデント
Chapter 9 困難の連鎖
Chapter10 シーンをデザインする
Chapter11 シーンの分析
Chapter12 コンポジション
Chapter13 危機、クライマックス、解決
Chapter14 敵対者の原則
Chapter15 状況説明
Chapter16 問題と解決策
Chapter17 登場人物
Chapter18 脚本の実際
Chapter19 プロの流儀

トーリーの本質

空気が音の媒体であるように、言葉はストーリーテリングの媒体の1つに過ぎない。言葉より深遠な何かがストーリーの本質なのだ。では、ストーリーがこれまでに人を引きつけるのはなぜか、その機能は何か、を考えよう。それには、作者が登場人物の目を通して世界を眺め、自分のこととしてストーリーを体験することがまず必要だ。つまり、作者は主人公として想像の世界で振る舞う。

自由な意思と欲求を持ち、行動し、結果を受け入れられるものは、何でも主人公になれる。動機、行動、結果を共有するなら、複数でも構わない。いずれにせよ、主人公の特質は、意志を貫くことである。主人公は、自分が何を求めているのかを知っている。一方、主人公は自己矛盾する欲求を無意識のうちに持っている可能性もある。

主人公が欲求を追う姿に観客は納得する。共感とは、「私みたいだ」と感じることで、気が合うこととは別の話。プレッシャー下の行動で表出する本質を見て、観客は共感する。ただし、欲求は成功の見込みのあるものであること。自分の人生に重ね合わせるから、可能性の無い主人公に観客は我慢できないのだ。ストーリーにおいては、中道を行くのではなく、極限まで振れる、振り子のような人生を生きること。観客がそれ以上は想像できないもの、を最後に用意する。

さて、主人公は欲求を満たすために、まず主人公にとっては無難で最低限の行動をとる。しかし、ストーリーでは、主人公の無難な行動が、ポジティブな結果をもたらすことは無い。主人公は、それまでの経験を踏まえた上で、世界の反応を予想して行動を取り、そこで初めて必然的結果を知ることになる。必然的結果とはすなわち真実であり、勇気を持って行動した人間だけが知ることの出来るものだ。このように、ストーリーは、主観的予想と客観的結果が一致せず、ギャップが生じるところにある。行動によって世界からの協力を得るのではなく、敵対者を刺激し、ギャップが生じるのだ。

主人公のリスクを考えてみよう。欲求を満たさなければ、どうなってしまうだろうか。意味のある人生にこそ、リスクは付きまとう。そして、登場人物の欲求が持つ価値は、そのために冒すリスクに比例する。

感情的真実を作り出すためには、私が想像の世界でその人物としてどのように振る舞うのか、を考える。具体的には、登場人物ごとに視点を変えてビートを作り、それを客観的に見てシーンを展開する。ギャップを生み出すために、正反対を考える。

この章は、恐らく本書の圧巻であろう。凡百のシナリオ教本が、面白くなるストーリーの作り方なるものをしたり顔で解説する中で、「そもそもトーリーとは何か」と問いを立て、それに答えを与えようとしているからだ。この本が世界中で読まれている理由であろう。しかし、この本が出版されるずっと以前に、日本の映画人がこの問題に真っ向から取り組んでいた。それが川邊一外だ。川邊は著書『ドラマとは何か?』で、ドラマとは、主人公と対立する環境とのぶつかり合いによる弁証法的原理に則っている、と看破した。スタニスラフスキーに着目し、貫通行動・超目標という概念を用い、作者が主人公となって作品世界で振る舞うこと、第一着手の行動から主人公が動き出すこと、などマッキーとは驚くほど共通した考えに至っている。というわけで、この本、脚本家のバイブルには違いないのだが、「実はいまさら」な内容を扱っているとも言える。

次は「Chapter 8 インサイティング・インシデント

ザ・ストーリー

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