京都鴨川藝術大学

Kyoto Kamo River Imaginary University of the Arts

生き方だけが生き方に影響を与えられる

フジテレビでやってた「知られざる脳の真実 世界を変える奇跡の力」っていう特番を見ていた。脳の持つ驚きの力や、脳に起こる不思議な現象を特集したドキュメンタリー的な番組。

とにかく脳は謎だらけで、色々解明されてきたと言っても、まだまだ分からないことばかり。番組を通しで見ていると、結局、MRIとかを使って、脳の活動部位なんかを外側から見て、何が起こっているか推測を立てる位のことしか出来ていないし、脳が引き起こす謎の現象に苦しむ人々は医者に治る可能性を示され光明を見出すけれども、それが同時に医者にとって実験台を手に入れる瞬間であるという、なかなか恐ろしい状況も見えてくる。まぁ病気って言うのは往々にしてそういうもので、そうやって医学は発展してきたから当然なんだけれども。

風景が数式に見える、という人の話は、途中から見たんだけど、この人は頭を殴られて天才になったのか。前に、頭を打って絵が上手くなった人の話を聞いたことがあるけれども、私の馬鹿な脳もある何かをキッカケに爆発的に能力を向上させる可能性を秘めている、っていうのはちょっとした救いのような気もするし、しかし天才の苦しみを味わわずに死ねる方が良いのかも知れないとも思う。

感動したのは、エコーロケーションという技法を習得した視覚障害者の話。目が見えないと、耳が研ぎ澄まされる。耳から得た情報が、脳の視覚を司る部分を刺激する脳の不思議、という内容なんだけど、脳の話なんかより、このエピソードに出てくる人たちの生き方の方がよほど刺激的だった。

エコーロケーションというのは、口からクリック音を出して、その反響を聞き取って周囲の状況を把握する技術。目の見えないコウモリがモノにぶつからずに飛べるのと同じ原理だ。それをマスターした外国の男性が、日本の女性に技術指導にやってくる。

この外国人がとにかくポジティブ。まるで目が見えているかのように躊躇なくガンガン前に進んでいくし、これは何だ、あれは何だ、向こうには何がある、あそこに行ってみよう、とこの世界を動き回る。いわば目が見える人間より、世界をよく見ている。見ようとしていると言うべきか。とにかく好奇心旺盛で、自分の障害について凹まないし、そこに「凹まないようにしよう」という言い聞かせが微塵もない。物にぶつからないようにしよう、なるべく厄介なことは避けよう、と生き方までもが消極的になっていた女の子は、彼に出会って生き方を変える。もっと触れよう、もっと知ろう、生きたいと思ったら行こう、やりたいと思ったらやろう。前からやりたかったというバンジージャンプに挑戦したいという彼女は、男性を連れて遊園地へ赴く。そこから飛び降りる二人の姿は、格好いいとしか言いようが無かった。まさに彼女が自分の殻を破った瞬間。映画のクライマックスのような美しさがあって、しかもそれは映画とは比較にならない力強さがあった。涙が出た。

生き方を返られるのは言葉じゃない。生き方だけだ。他人の生き方に触れて、自分の生き方も変わっていく。随分と青臭いことを言うが、それは人間の最も美しい部分の一つなんだと私は思う。