京都鴨川藝術大学

Kyoto Kamo River Imaginary University of the Arts

『君の名は。』

君の名は。 神木隆之介 上白石萌音 ほか

飛騨の山奥に住む女子高生・三葉と、東京の男子高校生・瀧は、互いの心と身体が入れ替わるという不思議な夢を見るようになる。入れ替わっている間の記憶はすぐに消えて無くなってしまうが、その痕跡があちらこちらで見つかる。やがて二人はそれが夢ではないことに気付き、互いの日記にその間の出来事を記録していくことする。そんな信じられないような形で交流を深める二人は、やがて互いを意識し始める。ところが、ある時を境に、入れ替わりの現象がばったりと起こらなくなる。三葉に直接会うことを決めた瀧は、薄れゆく記憶を頼りに彼女の元を訪れようとするが、そこで驚愕の事実を知ることになる――。

もし運命の赤い糸があるとするなら、二人を結ぶ赤い糸にはこんなエピソードが隠されているのではないか、という物語。あなたのことを忘れてしまうのは、死んでしまったあなたのことを忘れて行ってしまうから。つまり、震災の記憶が薄れて行ってしまう、ということを掛けている。恐らくだが、作者は『シン・ゴジラ』とは全く別の形で、先の震災を意識しているのだろう。

とにかく構成が上手いと感心した。心と身体が入れ替わるというのはベタだし、二人の時間がズレていて、そのズレを利用して過去と未来を書き換えるというのはちょっとファンタジーが過ぎると思うが、この若干の荒唐無稽さは、夾雑物を取り除いた純情なアニメでは活かされるし許されるのだろう。個人的には、ラストで二人を無理矢理合わせる必要があったのか、と思うのだが、「君の名は」でオチを付けたかったんだから仕方ない。最後の無茶な感じはちょっと『虹色ほたる』を思い出した。夏のアニメ映画ってこんなものなのかも。

それにしても、アニメってただの絵なのに、ここまで出来るのかと感心する。新海誠の作品は初めて見たけれど、この人が次にこれ以上のものを作れるのか、と他人事ながら不安になった。

セカイ系」が好きな中二病質の、私の苦手な同級生が本作を絶賛していたので、ちょっと尻込みしていたのだが、結果的に全く退屈せずに見ることが出来た。私は基本的に<綺麗なもの>だけで作り上げられるアニメより<雑多なもの>が映り込む実写映画の方が好きなのだが、こういう良作に出会うと、現実の汚い部分が見たくないからアニメにはまってしまう人の気持ちもよく分かるのだった。

田舎のレイトショーだというのに、ビックリするほどの客が来ていた。それこそ『虹色ほたる』を貸し切り状態で見たのとは大違い。隣に座った若い姉ちゃん二人は、ちょこちょこスマホをいじったり、映画の途中で話をしたり、二人で共有するために遠くに置いたポップコーンを取るのに延々とガサガサしていたり。まるで集中力が無くて、映画館来んなよボケと言ってやりたいほど鬱陶しかったのだが、物語が佳境に入るとすっかり黙り込み映画に没入していて笑えた。しかし、エンドロールの途中で立ち上がり、スマホのライトで忘れ物がないかをチェックするとか、まともな教育を受けてきたのか疑わしい奴らだった。映画業界が盛り上がるのは喜ばしいことだが、そっちが盛り上がるとこっちがこんな風に盛り下がることもままあるので、悩ましいところだ。