読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

京都鴨川藝術大学

Kyoto Kamo River Imaginary University of the Arts

夜泣き

我が家で飼っている犬が、いよいよ寿命を迎えようかとしている。

こいつが家に来たのは私が11歳の頃だったんじゃないか。私は動物が苦手で、家で一人反対をしていたのだが、弟が犬を飼いたいと言い始めて聞かず、半ば折れるような形で両親が買うことを決めたのだった。世話はきちんとやるとか、嘘丸出し。自分のことすらろくにきちんとしない弟にそんなことできるはずもなく、大きくなっても世話は母親に押しつけ、何なら私まで愚弟の分を世話してきたのだった。おかげでいろいろ勉強にはなったのだが、いまや一丁前に一人暮らししているあのアホはやっぱり最後まで面倒を見ないんだな、と思うと腹が立つというのか何というのか。

実はこの犬が家に来て一年後、この犬の子をもう一匹飼うことになった。こいつはまだ幼い頃、私の父が庭に放置した殺虫剤を口にして死にかけたことがあり、数年前にも病気を患って死にかけた。殺虫剤の後遺症で足が不自由になり、歩けなくなった足にウジが湧き、夏の暑さでまた死にかけ、私の父が開け放したままにした扉から脱走してまた死にかけ、と何度も生死の境をさまよってきた。先に死ぬのはこっちだろうな、と皆が思っていたのだが、やはり先に死ぬのはオヤジの方らしい。

もう歩けないし、飯も食わない。ずいぶん前から弱ってはいたが、急激に死が近くなっているのだろう。そして、夜鳴きだ。夜鳴き、というか、四六時中鳴いている。「ワーワン、ワーワン」というリズムを延々と刻み続けるのだ。正直、かなりきつい。ご近所にも迷惑だろう。

苦しいだろうな、何にもしてやれないな、家で飼われて幸せだったんだろうか、といろいろ考える。しんどいだろうから早く逝きなさいとも思うし、うるさいから早く死んじゃえよとか思ったりもして、我ながら酷いなぁと凹む。両親がボケて、昼も夜もなくなってしまったようなとき、あるいは百万に一つも無いだろうが私に子供ができて夜泣きされたようなとき、私はきっと冷静でいられないんじゃないだろうか。

悲しいけど、その程度なんだな、私は。