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京都鴨川藝術大学

Kyoto Kamo River Imaginary University of the Arts

暖かな布団

布団に入って本を読んでいた。時間も良い頃になって、寝ることにした。本を机において、一度トイレに行って、電気を消してもう一度布団に入った。布団が自分の体温になっている。凄く心地よい。カーテンを開けると街灯の明かりがぼんやりと部屋を照らす。目も暗さに慣れてくる。布団が、この冷たい外の世界から私を隔ててくれている。

ありがたいな、と思う。こうやって衣食住が満たされ、親が健康でいてくれている。このどこかの誰かが作った布団も、親がどこかで買って私に与えてくれたものだ。私はこんなにも守られている。

大人になるとはどういうことか。いつだったか、スヌーピーか何かの話を誰かが引用しているのを聞いて、そうだな、と思ったことを思い出す。家族で車に出かけて、子供は疲れて後部座席で寝てしまう。運転席には父さんが、助手席には母さんが乗っている。大人になるっていうのは、安全安心な後部座席に座るのを止めて、前の座席に座ることなんだ、と。

自分が大人でないことは分かっている。といって、子供でいられないことも分かっている。でも、この布団の暖かさを感じるとき、ここから出て行くことが急に怖くなる。

親を放っておくことはできない、なんて半分は本当だけれど、結局自分が怖いだけ、面倒なだけ。もう外に出なければならない時期はとっくに越しているのに、こんなことを考えていて情けなくなる。

嫌でも考える、嫌でも凹む、嫌でも年を取る、嫌でも明日が来る、嫌でも仕事に行かねばならぬ、嫌嫌嫌。嫌になって、また布団の暖かさに甘える。本当に嫌になる。