京都鴨川藝術大学

Kyoto Kamo River Imaginary University of the Arts

『銭ゲバ』

銭ゲバ 松山ケンイチ ミムラ ほか

赤貧の幼少時代、あることがきっかけで人を殺してしまった風太郎は、金持ちになって幸せになると心に決める。それから月日が経って青年となった風太郎は、とある大会社の社長一家を乗っ取ろうと画策するが――。という話なんだと思う。見たのはラスト3話だけ。

ちょっとしたことで人生の歯車は狂ってしまう。父が仕事をクビになり経済は困窮し、荒れた父は家族を見捨て、結果、母は病を悪化させて死亡。金に困った主人公が落ちている財布を盗もうとしたところ、学校の先生に見つかってしまい、勢い余って彼を殺害。逃亡中に知り合ったホームレスのオヤジに親切にされ人の温かさに触れたと思われた直後、彼が自分を警察に売ろうとしていることを知っていよいよ人間不信に。生ゴミを食ってまで、主人公は生き抜いてきた。そんな強烈な体験を経た主人公がたどり着いた結論が、「人間結局は金だ」というもの。これに次々と「金よりも心が大事だ」という市井の人々をぶつけて、さらに彼らをことごとく敗北させ、主人公の「結局金だ」という考えを強化させていく。しかし、その考えが強くなればなるほど、自分が欲しかった幸せが本当にこれだったのか、という思いが消せなくなっていく。

最終話が凄い。主人公は「自分の考えが正しかった」と言って死ぬことを決める。ダイナマイトの導火線に火を付けて、死んだ母との思い出の場所で果てようとする。するといよいよ、かつて夢見た幸せに対する思いが吹き出してくる。

彼が死の直前に見るのは、これまでに利用し、邪魔だと消し、いまなお敵対している人物たちが登場するアナザーワールド。平凡な、ありふれた、どこにでもありそうな、しかし、きっとこれが幸せと言っていいだろうという日常の世界だ。この描写は岡田惠和の面目躍如である。この人自身、ここが書きたかったんじゃないかと思う。残酷なのは、この別世界が、いまの世界とほんの一またぎであるということだ。こんなテレビドラマの作り方があるのか、と今更ながら驚いた。まぁ、ラスト、マツケンの一人語りは必要なかったと思うけど。

岡田惠和って私はやっぱり好きなんだが、描写は上手いのに、設計に対する見通しがイマイチで損してるなぁと思う。 

銭ゲバDVD-BOX

銭ゲバDVD-BOX