京都鴨川藝術大学

Kyoto Kamo River Imaginary University of the Arts

○ビルの屋上

男「俺には分かってしまった。もう既にいろんな人が知っている事実だ。でもみんな誰にも言わなかった。だからみんな知っていたけれど、誰も知らないことだった。それが分かってしまった。この世界には魔法使いがいるんだ。ナニがナニのままナニになってしまった人は、魔法使いになってしまうという言い伝えを聞いたことがないか。あれのことだ。いや、厳密に言えば、話は少し異なる。使えるんだよ、魔法は、誰にだって。君にだって使える。ただ使おうとしないだけさ。魔法の存在を信じていないから使えないんだ。君は魔法の存在を信じているか? ハハ、そうだろ。普通の人間はそんなものさ。追い込まれた人間が魔法の力に気付き、ついその力を発揮してしまう。『イヤボーンの法則』なんていうのもこれの一種だ。そして、いったん発動したその力はもう誰にも押さえることは出来ない。誰にでも使えるが、恐ろしくて誰にも使えない。それがいつの間にか、魔法なんてこの世には存在しないという話になってしまっているんだよ。いいや、それも少し違うかも知れない。忘れよう、無かったことにしようとしているうちに、本当に忘れて、無くなってしまったんだ。だから、たまにその魔法を使う人が出てくると、一時だけ、この世界は騒然とする。でも、適当に片付けられて、すぐに忘れられる。魔法を使った人の事情も気持ちも、全部ひとまとめにして、分かったようなふりをして、否定して、それで終わり。触れるな、見るな、気付くな、忘れろ。この世界には魔法なんて存在しない。みんな自分の力で切り開いていけ、ってね。さぁ、そろそろ時間だ。せっかくだから言い伝え通り、日付が変わるのを待っていたんだよ。フフ、長話になってしまったね」

男、誰もいない舞台を見回して、観客に背を向ける。

男「メガンテ!」

男、奈落に飛び込む。