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京都鴨川藝術大学

Kyoto Kamo River Imaginary University of the Arts

ピラミッドの底辺ですらない

止めておけば良いのに、ふと気になって調べてみてしまった。「前から二番目に座っていました」という彼女は合格していた。おめでとう。それで気になったのは、7人のうち落ちた3人のこと。落ちたのは先頭の女の子と、私と、最後尾の男性。

先頭にいたのは、ありゃ中国人だ。どうも立ち居振る舞いが日本人っぽくなかった。受験会場というと非日常だけれども、非日常であるが故にみんな比較的一様に振る舞うものだ。だから、彼女のちょっと普通でない雰囲気が気になっていた。どうもツレと一緒に受験しているようで、彼が中国語を喋っていたから、合点がいった。

最後尾に座っていた男性は、こう言っちゃ何だけれど、どんくさい感じの人だった。デブというほど太っている訳じゃないけれども、ドーンと、あるいは、のそーっとした人で、脂気の多い濡れたような髪がますます重い印象を受けるような感じ。見た目しか分からないから見た目のことばかりいって申し訳ないけど、要は冴えない感じなんですよね。

南海キャンディーズしずちゃんってさ、むかしモーニング娘。のオーディションを受けたことがあるらしいんだ。でもさ、本人がどれだけ本気だったのかはともかく、周囲の人間は彼女が合格しないことが分かっているでしょう? 彼女がいくら何を頑張ろうと、絶対にアイドルにはなれない。万に一つも、億に一つも、奇跡はない。こういうのを、火を見るよりも明らかという。

私は、あの受験会場で、件の中国人女性と、最後尾の男性が、落とされる候補であることをすぐに確認した。最低5人は採るだろう、私は最下位で合格できるんじゃないか、とゲスい計算をしていたことをここに告白する。

ところが蓋を開けてみれば、なんのことはない、私だって、落第候補の一人だったのだ。もしかした最右翼だったのかも知れない。

私は、ずっと後悔していた。あのとき面接で、言いたいことなんて何も言えなかった。そういえば執拗に、この学校じゃなければならない理由は? シナリオスクールに通おうとは思わなかったの? と尋ねられた。私は、ものが作りたいんだということ、自分の書いたものが映像化されるチャンスがあること、すぐ近くで指導してくれる人がいること等、たどたどしく理由として述べたんだけれども、なお追及の手が止まない。

それで、シナリオスクール……考えなくもなかったんですが、とブレはじめ、やっぱり学位もあるし、仕事を辞めて飛び込むという話に説得力を持たせるには、専門学校やカルチャースクールでは弱い、みたいなナヨナヨした主張を展開した。これがもう、強烈に失敗だったと、ずっと後悔していたのだ。

もちろん、提出作品の着想をどこから得たのか、どういうつもりで書いたのか、などという質問にも、恥ずかしくて冷静に回答することができなくて、もう失敗といえば全てが失敗だった。地元が一緒だとか、仕事は有休をもらいましたとか、これからまたホテルに泊まるとか、あとは当たり障りのない世間話をしていた段階で、落ちたことには気付いておくべきだったなぁ。

それでも、私は、たったあと一歩で合格できていた、あそこでしくじった、と思い続けてきた。折に触れて思い出しては、あぁーっ、と声を上げて嘆いていた。仕事中もそんな感じだ。でも、それは間違いだった。

私は、最初から、相手になんかされていなかったのだ。スクールカーストで上位とまで行かずとも、中位グループには所属できていると思っていたら、そう思っていたのは自分だけで、そのグループ内で密かに馬鹿にされていることを知ったような感じ、といえば私の惨めさが分かりやすく伝わるんじゃないだろうか。

止めておけば良いのに、つまらないことを調べて、私は2回目の不合格知ったような気持ちになった。