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京都鴨川藝術大学

Kyoto Kamo River Imaginary University of the Arts

人に教えるって難しいね

さて、こっちの部署にも新人さんが配属されていて、どうしたら良いんだろうとか戸惑っている姿がやっぱり普通に可愛いのである。ただ、大人しめの性格なのかカチコチに緊張しているのか、先の新人さんより随分静かな印象だった。

私の力量不足というのも大いに関わってくるが、話し掛けても全然会話が続かない。放っておくとずっと黙ったまま。それはやはり気まずいか、と思うが、話し掛けすぎても鬱陶しいか。愛想が悪いとかそういう訳じゃないのだ。真面目だし、一生懸命だし。

それで分かった。やっぱり先にあった新人さんは、可愛がられ方を知っているのだ。男心のくすぐり方を知っていると言ってもいいか。これは歓迎すべきことか、恐ろしがるべきことか。

新人にはみんな仕事を教えたがる(私もその一人だが)。それでそれぞれが自分のやり方を説明し始める。すると説明の穴に気付いた別の人間が、また自分のやり方を説明し始める。結局、あれやこれやと「やり方」ばかり説明されて、何をやっているのかサッパリ分からない。これは私が新人の時に痛感したことだ。

こっちの部署では、新人さんはずっと私の隣にいて、前回の部署と比べて比較的仕事を教える回数が多かった。そこで私は、私が教えてもらいたかったように教えることにした。

まず、何度でも同じことを聞いてくれて構わないと言った。前に説明しなかったっけ? と威圧的だったり嫌みを言ってくる上司には私が辟易していたのだ。メモは取ってくれていたけど、基本的な事務については、メモはほとんど役に立たなかったという自分の経験もある。一個覚えたら一個忘れるを繰り返しつつ、やがて身体が勝手に動くようになるものだし、そうじゃなきゃ仕事にならない。実際、彼女はメモを見返す余裕などなく、次はどうすると考えて動けなくなってしまっていた。

で、これは「やり方」ばかりを意識しているからだと私は経験からそう思う。そこで、まずそれをする理由と目的を示す。そしてその手順に正解がないことを説明し、私のやり方を見せる。つまづくたびに「いま何をしているか」を説明する。難しかったのは、彼女が自分からなかなか聞いてこないという点で、言葉を添えるタイミングが分からない。先回りして説明すると、説明されたものをなぞるだけで身につかないし、あるいは「言われなくても分かってるよ」状態になってしまうからだ。

でもまぁ結局、何度も繰り返すのが一番手っ取り早いみたいだ。彼女はちょっと覚えが悪いか? という声もあったが、私が新人の頃はもっと酷かった気がする。伸びしろがない分、私の方がむしろお荷物だ。

それにしても、私の周りの上司は、やはり私に教えたように、「やり方」ばかり説明している。どれも要はたった一つのことなのにそれぞれの手順を説明したりする。ただ一つの原則が、複数の例外のように聞こえてしまう。マニュアルに載っていない用語みたいなものも平気で使う。私はそうやって新人に教える上司を否定する立場に無いし、話の腰を折られる形になってイライラするけれども、しかし彼女にとってはどっちの説明の方が分かりやすかったんだろうか。そこが一番重要で、そもそもまず私は話がヘタなのだ。彼女がなかなか私に聞いてこないのは、そういう理由もきっとあるのだと思う。